七人目の子どもは戻らない
「その子、誰?」——山から帰った妹を、母だけが思い出さない。
あらすじ
山あいの町・七守町には、「山迎え」という決まりがある。
毎年八月七日、その年に十三になる子どものうち一人が御山へ入り、一年後の同じ日に帰ってくる。帰ってきた子を、同じ家で暮らす家族のうち一人だけが思い出せなくなる。町の人は、それを当たり前のこととして暮らしている。
高校二年の榊景の妹・小春は、去年の夏に山から帰ってきた。それから母は、毎朝の食卓で小春に訊く。「その子、誰?」
景は、考えたことを何でもボイスレコーダに吹き込み、生成AIに文字起こしさせる少年だ。春の夜、壁の向こうから小春の寝言が聞こえはじめる。誰にも分からない言葉で、問いかけるように上がって、答えるように下がる。
近所に越してきた民俗学者の水瀬と、その娘で中学に転校してきた澪。景は水瀬とともに、町の山帰りたちを訪ねて話を聞いていく。天狗、隠れ里、獣。山での一年は、帰った者ごとに違う形で語られる。そしてある日、景は役場の台帳に、ある二文字を見つける。
録音の文字起こし、役場の台帳、フィールドノート。記録の隙間から山の輪郭が浮かびあがる、民俗ホラー。
全四十五話、完結済み。
登場人物
登場人物
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語り手
榊 景
高校二年。口数が少なく、ぶっきらぼう。観察は細かいが、自分の感情は言葉にしない。いつもボイスレコーダを持ち歩き、考えたことをすべて録音する。
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景の妹・山帰り
榊 小春
中学三年。去年の夏、一年ぶりに山から帰ってきた。明るく、兄とは仲がよい。周りの空気を読んで先回りする。
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民俗学者の娘
水瀬 澪
四月に父と七守町へ越してきた。物おじせず、前置きなしに訊く。