剛板の校正師
知らない寸法は出せない。だから測る――度量衡の崩れた異世界の測量譚。
あらすじ
深夜の校了明け、製版オペレーターの折原基(32)は駅の階段で足を踏み外し、あっけなく死んだ。
白い空間で出会った幼い「神」が授けた権能は、剛板――思い描いた寸法どおりに現れ、持ち主以外のあらゆる影響を拒む板。ただし、知らない寸法の板は出せない。
落とされた先は、町ごとに「肘」も「枡」も違い、共通のものさしを失った世界だった。石切りの町ファルベでは、死んだ親方の肘とともに町の長さが失われ、教会の工事は三年止まったままでいる。基はそこに一本の白い板を据える。誰の身体でもない、狂わない一メートルを。
口下手で、世渡りの目を持たない男の武器は、剣でも魔法でもない。0.03ミリの見当を合わせてきた目と、「測ってから言え」という口癖だけだ。
枡を傾けて量る年貢の技。畑を三角に割って面積を出す測量。才ではなく数で狙う魔法。そして王都では、換算で利を吸い上げる換算局の長官が、基の板を静かに値踏みしている。
一メートルは、誰が保証するのか。この星の長さは、誰が決めたのか。
石工の娘テオドラ、数を忘れない少年リュカ、窓際の魔法学者、円周率を三十年追う老学者。基は仲間とともに、三百年前に失われた「すべての尺の元」を探して、東の廃神殿へ向かう。
物理と幾何は誤魔化さない。剛板の力は、測れることそのもの。度量衡の崩れた異世界で、ひとりの校正師が世界の目盛りを正していく、測量と内政のファンタジー。
プロローグ+全三十三話、完結済み。
登場人物
登場人物
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主人公
折原 基
三十二歳。中堅印刷会社の製版オペレーターだった。消極的で口下手だが、数値に関してだけは一歩も引かない。口癖は「測ってから言え」。
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石工見習い
テオドラ・キュビット
十九歳。代々「当主の肘から指先」を町の尺としてきた家の娘。父の死で町の基準が失われ、工事が止まった。実務家で、腕っ節も強い。
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魔法学院の窓際教授
ハルモス・ゼム
「魔法に再現性が無いのは術者のせいではない」と主張して干された変人。
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王立換算局 長官
ヴェスパ・グロス
単位が統一されると換算の手数料が消えるため、統一を全力で阻む。悪ではなく、合理的な既得権者。